「ぶすのこぶ」沢菊を代表する銘菓の誕生秘話
岩手県・久慈の「沢菊」の銘菓といえば「ぶすのこぶ」。一度聞いたら忘れられない、そのユニークな名前のお菓子の生みの親は3代目社長の宮澤陽一さん。
「ただお菓子を作るのではなく、食べた時に新鮮な驚きを提供したい」と考えていた宮澤さんはある日、久慈渓流をスケッチしている時に「ぶすのこぶ」と書かれた黒い看板を発見しました。
ユニークな名前に込められた想い
その謎めいたユーモラスな響きは心の中に絶対的なものとなって残りました。調べてみると、アイヌ語の地名ということは分かりましたが、何を意味するのか諸説あるものの決定的なことが分からず、「謎めいた名前」というイメージのまま今日に至っています。
しかし久慈渓流の中程の太古の森の中でアイヌの人たちが独特な生活習慣を守りながら暮らしていたことは確かだと宮澤さんは想像しています。そうした想いから生まれた「ぶすのこぶ」は北海道産のあずきをやわらかくしたものに、小麦粉・バター等で作ったそぼろ生地をまぶして焼きあげ、久慈渓流に住む小魚やカニの卵を表現しました。
沢菊を代表する銘菓「ぶすのこぶ」には、「ただ食べるのではなく、楽しんで召し上がれる、〈にんまり〉とくるようなお菓子を提供したい」という宮澤さんの想いの象徴なのです。
ふわふわの食感!進化したチーズケーキ
沢菊には「ぶすのこぶ」以外にも個性的なお菓子があります。「ふわっときらら」もその一つ。「口の中に入れてふわっとするチーズケーキを作りたい」という宮澤さんの想いから誕生したこの「ふわっときらら」は、ホイップクリームのようなチーズケーキがかごに盛られた不思議な形。「ふわっ」とした食感を出すためにキメの細かいメレンゲを作り、九州産のコクのある2種類のチーズと生クリームで味に奥行きを持たせています。
その「ふわっときらら」が進化したのが「山ぶどうチーズケーキ」。沢菊の本社がある久慈は山ぶどうの作付け面積が日本一。その特産品である山ぶどうの果肉ソースでチーズケーキに手作業で模様を書き込みました。白い地に鮮やかなぶどう色の模様が踊っている様は、久慈の白樺林に蛍が飛んでいるイメージです。
茶道裏千家家元賞を受賞した「桃べっぴん」
「桃べっぴん」は、種まで食べられる完熟前の桃を北海道産の白い豆「てぼ豆」の餡で包み、ホワイトピーチの洋酒でキレとまろやかさをプラスした上品な和菓子。その名の由来は、久慈を訪れた名優・故、森繁久弥さんが久慈の昔から続く風土・綺麗な湧き水・人情に感激し、久慈を「べっぴんの地」と名付けたところから頂いたそうです。沢菊のお菓子には、一つひとつに味わい深い物語が吹き込まれています。
岩手ならではの物語をお菓子で表現してゆきたい
社長の宮澤さんは、今でも自ら全国を歩いて商談会を行っています。その中で感じていることは、「今の日本は、高度技術が進む反面、人々の心は素朴なものを求めている」ということ。そして宮澤さんは「田舎にその可能性がある」と思っています。その点から見ると、岩手はお菓子の元となる資源が豊富と言えます。岩手ならではの物語をお菓子で表現することで、食べた人に驚きと夢を与えたい。お菓子が人と人とをつなぐ架け橋になってもらいたい。「お菓子はコミュニケーション」という沢菊の想いは、これから先も夢のあるお菓子を届け続けます。
















